日本にいるからこそ🎐

日本人も知らない日本を知る

たまたまパスポート持ってたから、そのままインド行ったんですよ

近所の図書館に本を返しに行くと、急にお腹が空いた。図書館併設のカフェに行こうとしたら、平日はやっていないのかランチの旗が出ていない。そこで前から気になっていた、近くのネパール雑貨屋さん兼喫茶店に入ってみることにした。

恐る恐るドアを開ける。「すみませーん、ランチやってますか?」「やってますよ、お好きなお席へどうぞ」とのことで、優しそうなおじいちゃまが出迎えてくれた。店内は古民家を素敵に改装されており、お香の香りが漂う。ちなみに客は私一人。「素敵な古民家ですね」と言うと「インドに半年行った後、改装したんですよ。話が長くなるから、先にカレーを作りますね」とのことで、このお店自体なにかただ物ではない雰囲気が漂っていたが、これはまた面白そうな話が聞けそうだ。

f:id:Nisshi:20190918141643j:plain

カレーは至って普通で(すみません)、食後にチャイを頂きながらお話しを伺うことにした。そして話を聞けば聞くほど『わたしゃ、また変わった人に出会ったなぁー』と思った。

まずインドに半年行くことになった経緯を聞くと、家族三人の介護を7年した後、ご自身が体調を崩されたらしい。それを癒すために日本の東北などを旅したが、良くならない。このまま自宅に帰ると良くないことばかりを考えてしまうので、突然インドへ行ってしまったらしい(たまたまパスポートを持っていたとか)。「カルカッタに行ってね。僕はなんで今インドにいるんだろう?って思いました」とのこと。どうしてその時にインドだったのかと問うと「昔インドを旅したことがあって(当時は二カ月くらい)、その時に出会った友達が元気にしているかなという感じで」とのこと。この時、あぁ旅行というのは、歳を取ったり辛いことがある時にこういう風に思い出されるんだなと思った。私もとてつもなく人生で辛いことが起こったら、ブータンへまた行くと決めている。その他、帯状疱疹ができるくらい精神を病んだら、南インドのケララでアーユルベーダを受ける。人生が八方塞がりになったら、インド・ダージリンへ人生の師であるブペンさんに相談に行くという具合に。

f:id:Nisshi:20190918141645j:plain

さらに『旅行記を書いたら、絶対に面白いんじゃないか?』と思うような武勇伝が、たくさん出てくる。40年くらい前にジャカルタに行こうとしたが、デンパサール空港までしかチケットを買っていなかった。国内線でジャカルタに行かなければならないが、夜遅くてチケット販売所は閉まっている。さてどうするか。休憩室で煙草をふかしている機長さんらしき人を見つけて、その人に一万円を渡し「ジャカルタ!」と言ったら、お金は機長のポッケに入れられた。そしてちょうどあったジャカルタ行きのプロペラ機にのせてもらえたらしい。ただし飛行機を降りて外に出る時は荷物用の通路を通り、そのまま外へ出たとか。金を渡して飛行機に乗せてもらおうとする、その精神に脱帽。他にもネパールに5週間くらいいて、サランコットの山に登ったら、地元の知り合いに偶然出会ったとか。どんだけ世界は狭いんだ。

「この11月にもインドへ行ってね、その後コーヒー豆の仕入れにベトナムへ寄る予定なんですよ。いいでしょ?」今回は三か月くらい行くらしい。「インドで数か月間、何をするんですか?」「南インドを旅しながら、写真を撮ります。ここで写真の個展でも開こうかな」その通りだ。別に写真家じゃなくても、自由に個展を開けばいいじゃないか。どうして私は個展はプロの写真家が開くものと決めつけていたのだろう。「ここは昔からこのお店だったんですか?」と聞くと、昔はとある工場だったらしい。しかしインドへ半年行った後、今のような素敵な古民家にご自身で半年かけて改装されたのだとか。「頭がインドのうちに、やっちゃったんです。日本人の頭に戻ると、思い切ったことができないから」これには私も深く同意する。確かに頭の中や感覚を海外にいる時のままに保つことができれば、日本でも気持ちがある程度自由になれるのかもしれない。

このおじいちゃまの話を聞きながら、私は自分が自由の身でありながら自由でないことを知った。いや、たいがい自由なんだろうけど(そんなんゆうてたら、あんたいつか刺されるで!と友人に言われたのを思い出す)、思考パターンが色んなものに制限されていて、うまく自由を操れていない。例えばおじいちゃまは儲かるとか儲からないとかいうことにこだわらず、自分のしたいことをしている。喫茶店をしながらこうして面白い話をお客さんとしたり、海外に数か月行って写真を撮ったり、ベトナムで豆を仕入れたり、写真の個展を開こうとしたり。それに比べて私は結局、過去に自分が習得した知識や経験からできて、労働条件がフレキシブルな仕事をしているに過ぎず、本当に心からワクワクするようなことをしていないではないか。しかも今はその仕事にかかりきっりになって、身動きがうまく取れずにいる。だから定期的に『これが本当に自分のしたいことなのか?』という疑問が沸くのだ。

f:id:Nisshi:20190918141649j:plain

このおじいちゃまみたいに好きなことをするなら、何をするだろう。お金を自分できちんと稼がないと・・・次は引っ越ししても辞めなくても済む仕事を・・・などと、何にも今後のことを気にしなくてもいいのなら。ただこの方もこの境地に至るまでに、様々な苦労を乗り越えられていたようだった。昔のことを思い出しては、話の端々にその苦労がにじみ出ていた。「インドへ半年行った経緯を話しだすと、明日の朝になるから」と言っていたところからも、その大変さは想像できる。

正直、カレーもチャイも特別なものではなかった。でも確実にまた私はこのお店に来て、おじいちゃまと長々と話をするだろう。商売って結局、そうゆうものなのかもしれない。