日本にいるからこそ🎐

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あるカレー屋さんの話

最近お気に入りのカレー屋さんがある。ひょんなことから三年前まで働いていた会社の一番古い上司と連絡を取る機会があり、その上司が教えてくれたお店。なんでもその上司の大学時代の彼女の親戚がやっている店らしい。そこに元部下の私が行くというのだから、世の中は不思議な繋がりで満ちている。カレーはシンプルながらもおいしかったので、今日もまた行くことにした。

多分、教えてもらわなかったら絶対に自分では入らない店だと思う。お店が何軒か入っている小さなビルの二階にあり、外に出ている看板がなんとも古めかしい。なんかこう、ミックスジュースとかナポリタンなんかを出してそうな感じの。狭い階段を上ってガラスの引き戸をガラガラと開けて中に入ると、カウンター、テーブル席、奥へ行くとさらにテーブル席がある。前に来た時は奥のテーブル席に着いたがどうも落ち着かなかったので、今日は狭いカウンター席に座った。既にカウンター席には30代前半くらいのお兄さんが座っており、マスターと話している。常連さんらしい。店内は昼時とあって、サラリーマンや若い子、中年など色んな人で込み合っていた。私はビーフカレーを注文し、テレビに目をやる。そして店内を観察する。

(色んなカレーの写真をお楽しみください。これは南インドカレー)

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年配のマスターがカウンターの前でご飯をよそったり、カレーをかけたり、サラダを作ったり、皿を洗ったりしている。別のおじちゃんがホールを担当し、注文を取ったり料理を運んだり水を注いでいる。おばちゃんはホール兼会計のようだ。このホール担当のおじちゃんがとにかくせわしなくて、いつもせかせかと動き回っている。「マスター、サラダ三つ」「マスター、次チキンカレーとビーフカレー」「マスター、フォークフォーク!」「カレーまだ?!」という感じで、ちょっと落ち着けよ!と言いたくなる。それに引き換え、マスターは大変マイペース。

(ネパール、ダルバード)

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私のビーフカレーが来て、汗をかきながら食べる。このカレーは始めはマイルドで、後でピリッと辛くなる。特別なカレーじゃないんだけれど、シンプルでなぜかおいしい。店内はお客さんが少し帰り、ひと段落したよう。ホール担当のおじちゃんがマスターに言う。「人入れそうだったら、店開けとけば?」どうやら店があまりにも込み合うと、入り口を閉めてしまうらしい。するとマスターは「店に入ったのに座れなくて気分を悪くするよりも、閉めてしまった方がいい」と言う。そして茶目っ気に私に「適当な商売してるでしょ?」と言う。いえいえ、お客さんのことをよく考えていると思います。儲けることばかりを考えるとお客さんのことが目に入らなくなり、結局うまくいかなくなりますから。そしてマスターはカウンターのお兄さんにコーヒーを出し、私にも「コーヒー飲む?」と言ってサービスしてくれた。しかしカレーが辛くて、コーヒーの味が分からない(笑)

(タイ、グリーンカレー)

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またお客さんがどっと来て、ホール担当のおじちゃんとおばちゃんがマスターに次々と注文を通す。「マスター、サラダ三つ」「マスター、チキンカレーとビーフカレー」マスターはせっせとサラダを作って出す。そして言う。「次なんだっけ?」こういうのが永遠に繰り返されており、それを見ていた私と横に座っていたお兄さん、ホール担当のおじちゃんとおばちゃんが一緒に笑う。「あはははは!コントじゃないんだから」店内ではスタンドバイミーがかかっていた。なんか幸せ。

(スリランカ、ベジカレー)

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体も気分も温まって、店を出た。私は思うのだけれど、リーダーがぽやーんとしているとしっかりした人が周りに集まるか、もしくは周りがしっかりしていくような気がする。昔会社で働いていた時も、ちょっと上司がぬぼーっとしている人だった時、これはあかん!となって周りがせっせと一生懸命働いていた。自分たちでアイデアを出して、あぁしよう、こうしようと自主的に動いたりして、逆に部下は成長できたように思う。のびのび仕事ができる。上司がすごくできる人であれこれ言うタイプだと、的確に指示を出してくれて動きやすい一面、ちょっとしんどい。自分で物を考えなくなるかもしれない。しかも部下が自由にアイデアを考えないと、結局その上司の頭の範囲内でしかアイデアも出ない。もっといいアイデアを部下が持っているかもしれないのに。

マスターはのんびりご飯をよそったりしている合間に、私の横に座っているお兄さんにふくしん漬けの小皿をそっと出していた。(ふくしん漬けの小皿が各テーブルに置いてある)ホール担当のおじちゃんがせかせかして見落としていることを、きちんと察知してマスターが黙ってフォローしているのだ。昭和の雰囲気漂う喫茶店。シンプルにおいしいカレー。ほのぼのとしたマスター。寒い冬の平和な昼下がり。

マスター、また来ますね。